令和5年度 檜山会長挨拶
平素より、豊田工業高等専門学校(豊田高専)の教育後援会の活動に対しご理解とご支援を頂き、誠にありがとうございます。新一年生の保護者の皆様におかれましては、お子様のご入学を心からお喜び申し上げます。本会は、豊田高専の運営費交付金等で制度上支援できない学生の諸活動に対し、資金的な支援を行っております。なかでも、学生の課外活動や教育活動に対する助成、生活環境の設備充実等が支援の中心となります。皆様からお預かりした貴重な会費は、本年度もこれらの活動のために支出させて頂きたく、先ずはお願い申し上げます。
ウクライナにおける戦争が続くなか、地球規模の気候変動や技術革新の波は、技術立国たる我が国の存亡をも揺るがしかねない大事として、我々に押し寄せてきています。国立高等専門学校の重要性が問われる時代と言えます。思うように先が見通せない状況ですが、教育後援会を含む豊田高専が一丸となって、この困難な時代を切り拓くべく努力して参りましょう。思い返せば、2021年4月22日の「気候変動サミット」において、菅内閣総理大臣(当時)は2030年度における温室効果ガスの排出量を2013年比で46%削減する旨、宣言しました。これを受け、2021年4月23日、トヨタ自動車代表取締役社長兼執行役員兼CEO(当時)の豊田章男氏は、個々の優れた技術を組み合わせる複合技術こそが日本独自の強みであると発言し、高効率エンジン、モーターの複合技術、カーボンニュートラル燃料が、今後の日本を守り切り拓いていく戦略であると言及しています。
新型コロナウイルス(COVID-19)の蔓延を経験し、我々は新たな時代(new normal)における情報技術の必要性を痛感しました。情報技術開発とその普及は、情報工学科が取り組むべきテーマです。また、超高齢社会である我が国は、高齢者に優しいロボット技術や医療の現場で役に立つ技術の開発を急ぎ、医工連携の学問分野を切り拓くことが重要です。これは機械工学科が取り組むべき課題と言えます。そして超高齢社会に適したスマートシティの構築、そのための都市デザインや、新たな発想による建築デザインの普及は、建築学科が得意とする領域です。一方、地球温暖化の進行によって毎年のように豪雨災害に見舞われるようになっていることを考えた場合、気象学や水文学に立脚した統合的水資源管理や流域治水、河川洪水を軽減するための技術や人に優しい河川整備が急務です。これは環境都市工学科のタスクと言えます。そして温室効果ガスの排出量を削減し、気候変動の緩和に真剣に取り組むのであれば、脱炭素社会を実現するための技術開発と新たなエネルギー開発が急務です。これは電気・電子システム工学科に期待したいテーマです。そしてこれら以外にも、脱炭素社会の実現に向けて、以下のような研究のシーズ(種)があります。
- マテリアルフロー(使用・分解・回収)を考慮した材料設計
- 二酸化炭素の光還元反応による炭素原子の再資源化技術開発
- 大気中の二酸化炭素を分離膜などにより濃縮する技術開発
- 海洋生態系への影響が小さい可食化プラスチックの開発
- 高エネルギー密度、高安全性でサイクル寿命の長い蓄電池の開発
- 高発電効率の固体酸化物形燃料電池や固体高分子形燃料電池の開発
- 個人・時間単位での二酸化炭素排出量の収集・可視化システム構築
- 光デバイスを半導体チップの中に一体化した光電融合プロセッサの開発
- 量子コンピュータを用いた最適マッチング技術開発
- イン・メモリ・コンピューティング(in-memory-computing)技術開発
- 電気自動車(EV)を中心としたモビリティの普及
- EVと電力網が協調した電力供給網の実現とスマートシティの確立
- スマートシティ機能の拡充と都市全体の省エネルギーの進展
以上のような諸課題に立ち向かえる人材育成の面で、今まさに、豊田高専の存在感が問われていると言えます。豊田高専には、これらのシーズに応える教育と研究の大きな受け皿になって頂きたいと願います。そして本会は、学生と教職員をバックアップする支援団体として、今まで以上に有機的に、そしてより積極的に活動していきたいと考えます。
コロナ禍中であった過去3年間、本会はその諸活動を縮小せざるを得ませんでした。令和5年度は、withコロナの時代(new normal)に相応しい活動を継続・再開したいと考えております。会員の皆様に於かれましては、可能な範囲で積極的にご参加くださいますよう、宜しくお願い申し上げます。